【ベジタブルテック創業ストーリー】 管理栄養士・岩崎真宏と柔道整復師・宇土善之。医療従事者の2人が独立して農家と共に創業した想いとは?

【ベジタブルテック創業ストーリー】 管理栄養士・岩崎真宏と柔道整復師・宇土善之。医療従事者の2人が独立して農家と共に創業した想いとは?

【ベジタブルテック創業ストーリー】 管理栄養士・岩崎真宏と柔道整復師・宇土善之。医療従事者の2人が独立して農家と共に創業した想いとは?

「栄養学とテクノロジーで野菜を身近に」を理念に掲げるベジタブルテックは、二人の医療従事者が共同創業したベンチャー企業です。
岩崎さんは、医学博士で管理栄養士と臨床検査技師の国家資格を有する医学・栄養学の専門家として、病院や大学で治療や研究を行ってきました。宇土さんは柔道整復師と鍼灸師の国家資格をもち整骨院経営をしてきました。

そんな二人が大学、病院、整骨院を辞め、ゼロから組んでくれる農家を探し、商品開発をして、投資家を探し、顧客の声を聴き、ベンチャー企業として取り組んでいます。その創業経緯や想いについて紹介します。

医療従事者が起業 その背景と想いとは?

岩崎真宏さん(現CEO兼共同創業者)は、関西の病院で生活習慣病の食事療法を行う管理栄養士として働きながら、医学研究者として医学的な研究を行い、人体の仕組みと食事の栄養の関わりについて学んでいました。

食事内容を変えるだけで治療効果が高まるだけでなく、今まで効かなかった薬が効くようになること、そのことに喜んでくれる患者さんの心に触れてきました。すでに病気が発症してしまった身体では、細胞の状態に不具合が生じていますが、細胞に届ける栄養次第で細胞の悪い状態を改善してくれることを研究室と臨床現場で実感してきました。

そして健康な人であれば、栄養によって、食事によって細胞を健康な状態に保てたり、成長期には発育に適した栄養、スポーツには種目に適した栄養、妊娠中や授乳中の母子のための栄養、など、あらゆるシーンで必要な細胞の状態を栄養が整えてくれることを確信しました。

宇土善之さん(現COO兼共同創業者)は、広島の整骨院で患者さんへ施術をしていると、同じような筋肉量や骨格の人でも、痛みが出る人と出ない人の違いがあることに気づきました。

また、施術をしても効果が全く違い、運動指導をしても体に変化が出ないことがあります。そういう場合には食生活に根本的な原因が隠れている場合があるため、食事内容や生活習慣のヒアリングが欠かせないとのことです。例えば、コンビニ弁当中心の生活をしていたり、パンだけだったり、糖質を抜いていたり、お菓子が多かったり、野菜が不足していたりなど、偏った食生活を送っている人が「施術をしても効果が出にくい傾向になる」ということが分かってきました。

特に多くの方が野菜不足であることにも気が付き、「もしかしたら、野菜不足が原因なんじゃないか?」、「野菜って、そもそももっと大事なものなのではないか?」という気づきから、広島県の農家を回って、有機野菜を仕入れて患者さんに提供するようになりました。最初はトマト、小松菜、エゴマなど、有機野菜のみを販売する「小さな八百屋さん」のようなことをしていましたが、野菜を購入していただいた患者さんの血糖値やコレステロールなどの血液検査の数値が変わって、痛みも劇的に減る人が増えました。このような経験から、施術と運動に、栄養でのアプローチを併用することが大切だと考えるようになりました。

医学・栄養と運動機能。専門分野の異なる二人が出会ったきっかけとは

2014年秋に大阪で開催されたピラティス団体イベント(PHI Pilates JAPAN FESTA)において、主催代表の桑原匠司さんによってお互いに紹介される形で出会いました。

宇土さんは患者さんと向き合う過程で栄養の大切さを感じ、治療院での栄養指導や野菜販売などを行い始めていたところでした。

岩崎さんは「健康のために栄養学を活かしたい。栄養は食材から届けられるものだから、農家さんも健康増進のためのチームの一員のはず。それを実現するには起業という道しかない」という気持ちになっていた時期でした。

出会ったときから、2人は医療現場や農業の状況などについて同じ課題意識があったことや、医学的な会話の中からも野菜不足を解決したいことや、野菜の栄養学の面白さで意気投合しました。そして「何か一緒に形にしたい」という気持ちから、たくさんのミーティングを重ねていきました。

当時、宇土さんは広島、岩崎さんは大阪に住んでいたため、それぞれの臨床現場での仕事が終わった夜から深夜まで、Skypeを用いたオンラインミーティングを繰り返しました。夕食を食べることを忘れるほど、想いや事業構想を語り合いました。

そして、2人の想いは「農家と連携して、栄養学的な野菜商品を開発販売するヘルスケア・フードテック企業」という形を目指して事業を起こすことで一致し、2015年 Omoi Foods株式会社(現ベジタブルテック株式会社)を創業するに至りました。

「両親と友人が応援してくれたのが嬉しかった」とのことです。

野菜を商品の主役と考えた理由とは

野菜はヘルシーと誰もが知っていて、科学的にも多くの良い働きが報告されているにも関わらず、なかなか野菜を食べることは日常生活では難しいものです。特に岩崎さんは臨床現場での患者さんへの栄養指導を繰り返すうちに、多くの人が野菜不足であり、野菜の良さを伝えるだけでは健康問題の解決は難しいということを感じていました。栄養指導でどれだけ野菜不足解消について説明しても、多くの患者さんの意見は「わかっている。でも手間」でした。そこで、野菜摂取の手間を減らすには加工することだと思うようになりました。

宇土さんは、岩崎さんの栄養学の知識や描く壮大なビジョンに感銘を受け、ちょうど知り合っていった広島県の農家さんたちを岩崎さんに紹介しました。そして、「岩崎さんの栄養学に基づいて、本当に良い野菜商品を作ろう」と考え、商品開発や物販については素人である2人の事業化への取り組みが始まりました。

健康のために野菜を食べること、食べるなら良い野菜を食べてもらうことを目指して始まりましたが、当時は「良い野菜って何?」、「栄養はサプリメントで摂れるから野菜食べなくてもいいんじゃないの?」という意見も多く、世の中の栄養学におけるリテラシーを高めていくことも必要と感じていました。

ほとんどのひとが、病気になるまで栄養学を学んだことがないからです。そこで岩崎さんは、栄養学の基礎やヘルスケアやウェルネスのために実践できる栄養学を伝えることを、セミナーや講演会などで行ってきました。そういった活動は、多くのトレーナーや医療従事者の方々がお声をかけてくださったことで実現でき、出会った方々とは現在も温かい協力や応援をいただいていることが何より嬉しく有難いと感じています。

創業後の商品開発と状況は

世の中の栄養学リテラシーを高めていくことと並行して、必ず来る野菜を食べる健康社会のために、野菜商品を開発することは絶対条件でした。

しかし、商品開発ではたくさん失敗してきました。

広島の神石高原町の農家さんに協力してもらいつつ、岩崎さんと宇土さんは2週間山籠もりして、使わせていただいた加工工場で野菜ジュースや野菜ふりかけの開発をしました。

野菜のしぼり汁だと食物繊維が失われてしまう。だから野菜を余すことなくジュースに入れようという発想でした。目の前でミキサーで作られる野菜や果物ジュースはありましたが、いつでも冷蔵庫から取り出して飲めるものが存在しなかったからです。唯一、青汁は冷凍した状態で販売されていましたが、解凍してコップに移して飲む手間や、しかも美味しくはない。搾り汁のものは食物繊維も減っていることや、なによりケール1品目しか摂れないというものでした。もちろん青汁が悪いということではありませんが、野菜摂取の選択肢が少ないと感じていたのでした。

そこで、多種類の野菜を丸ごと食物繊維も全て含んだジュースにするという実験を行いました。複数の新鮮な無農薬野菜をミキサーでジュースにして、瓶詰めにし、煮沸殺菌で雑菌をなくし、野菜だけなのに美味しいジュースができました。知り合いのアスリートやトレーナーに飲んでもらおうとサンプルを郵送しようと準備していました。

ところが、発送前夜、なんと瓶ごと爆発しました。天然のものにこだわって、保存料を入れないで作ったため、野菜の食物繊維や酵素などによって常温では発酵が進んでしまったのでした。この経験から、別の開発手段を模索することにしました。

その後、水分が発酵や微生物を媒介するので、フライパンで炒めて水分を飛ばし、ふりかけにして野菜を食べるのはどうかというアイデアから、野菜ふりかけを開発しました。ところが長時間加熱しないと水分が完全にはなくならず、出来上がった野菜は焦げてたり、加熱し過ぎで栄養成分が失われているという本末転倒な状況になりました。

商品開発の難しさ、野菜を野菜として届ける難しさに直面しました。「いっそのこと生野菜をそのまま届けようか?」とも考えましたが、鮮度の維持の難しさ、無農薬野菜だからこそ虫も野菜を食べるから野菜に虫食いの跡があるとクレームになったり、など、「健康のために、農家のために、野菜を届けるために、という取り組みはこれほど難しいのか」と痛感しました。

野菜を用いた商品開発の苦悩と、新たな農家さんとの出会い。 ベジタブルテックへの第一歩

「どうすれば野菜摂取の手間を減らせるか?」だけでなく、「どう加工すれば、衛生的にも栄養的にも安心な野菜加工品ができるのか」という課題のなか、もちろん収入なんて無く、2人で勉強と会議に費やしていました。

そんなとき、お世話になっているスポーツ関係の専門学校の方が「ちょうど宮城県に通信制の農業高校を開校するんだけど、そこに面白い農家さんがいるから紹介したい」と言ってくださいました。その農家さんが現在共にに事業を行っている柳渕淳一さんでした。
柳渕さんの農業への情熱と愛情に感動し、大阪のお好み焼き屋さんで岩崎さんと柳渕さんは語り合い、柳渕さんは「農業は宇宙だ」とお話しされ、岩崎さんは「栄養は宇宙だ」と話し、意気投合しました。

「農家さんと管理栄養士が熱い想いで繋がった瞬間でした。」と、宇土さんはあの日のことを思い出します。

柳渕さんとの出会いからベジタブルテックは、健康食品会社でもなく、食品販売会社でもない、健康のために野菜を食べてもらう、「野菜を食べる人が増えるから、棄てる野菜がなくなる」というヘルスケアと農業の連携・循環型の事業モデルを作り上げようと決意しました。

それが野菜を売るだけではない「新しい野菜屋さん」としてのベジタブルテックへの第一歩でした。

野菜の水分のみを非加熱で抜くことでパウダーにする発想

柳渕さんはアイデア豊富で、発明家のような方です。「野菜を乾燥したら腐らなくなるはず」ということから、野菜を乾燥させて粉末する手法を開発しました。微生物や酵素は水を媒体として栄養を分解してしまい、野菜が傷んでいきます。

岩崎さんは「これだ!」と思いました。ふりかけの開発失敗の経験からも、加熱することなく水分を除去して粉末にすることの価値に気付くことができたと振り返ります。
柳渕さんは、大変苦労されて野菜の栄養を損なわないように粉末にする技術を確立され、そのテクノロジーと岩崎さんの栄養学をかけ合わせて、『オールフィト濃縮乾燥法』というプロセスで栄養を保持しつつ完全粉末にし、食べる人が健康になれるように栄養学に基づいて野菜を組み合わせた野菜商品の開発に取り組んできました。

栄養学を駆使し、独自の技術によって生まれた野菜パウダー商品「粉野菜」

パウダー化する工程の中で、栄養素や香り、旨味などが失われてしまわないように、非加熱で乾燥させていく『オールフィト濃縮乾燥法』では、特許技術により栄養素を壊すことなく野菜を丸ごとパウダー化することができるので、栄養素が収穫時のまま保存されています。

原材料となる野菜にもこだわり、定植から収穫まで農薬を使わず完熟有機肥料のみで栽培しています。完熟まで育て、野菜の栄養が最も豊富で美味しい状態で収穫して粉末化しています。野菜嫌いの子供が食べても、その野菜が好きになるような畑の完熟野菜を粉末化して、野菜だけをスティックやカプセルに入れて保存料や添加物は一切入れていません。

しかも、廃棄する野菜ではなく、美味しく食べれる完熟野菜を原材料にしているため、農家さんには粉野菜のために野菜を生産していただいており、農家さんとチームとしての連携と信頼関係を感じることができます。岩崎さんと宇土さんが起業前に想い描いていたチームが、ついに現実となってきました。

ベジタブルテックの「粉野菜」は水分のみを抜いた「野菜」で、食品カテゴリーとしては「野菜加工品」となり、サプリメントのような「健康食品」コーナーではなく、野菜売場のサラダやカット野菜と同じカテゴリーになります。本来野菜がもつ食物繊維や抗酸化作用、フィトケミカル(代表的なものにトマトのリコピンや紫人参のアントシアニンなどビタミンやミネラル以外の栄養成分のこと)、さらにはまだ人類が発見できていない天然栄養成分を簡単に摂ることができます。

また、パウダー化しても野菜本来の香りが残っているため、香りも「野菜そのままですね!」と驚かれることがあるほど。野菜の色素成分も鮮やかで、絵画の画材にも使っていただくこともできました。これほどの香りや色彩を残こすことができる野菜パウダーはありません

野菜の代わりとなる粉野菜 簡単に、いつでも、どこでも野菜不足を解消

知り合いのフィットネスジムやクリニックでテスト販売していただいたところ、良い感想をたくさんいただくことができました。

ご意見として多かったのは、「二日酔いしなくなった」「肌や体の調子が良くなった」「便通が良くなった」「なんか身体がすっきりする」「外食(油の多い食事)の罪悪感が減りました」という声でした。

これらは野菜が本来もつ栄養の効果で、もちろん生野菜でも感じられることです。粉野菜を通じて簡単に野菜を食べる習慣ができて、生の野菜も食べてもらえれば良いと思っています。
野菜に含まれている食物繊維は食事の脂肪の吸収を抑えてくれますし、野菜にはアルコールによる肝臓炎症や脂肪肝を防ぐもの、野菜そのものが持っている抗酸化作用は健康や美容、老化予防、認知症予防などが栄養学の研究で明らかになってきています。こういった最新の医学や自然科学の情報が欠かせないところも栄養学の面白いところであり、野菜の価値に触れて、栄養や健康に興味を持つきっかけになれば嬉しいと岩崎さんは語ります。

野菜を通じて、心身の健康を目指す

食生活は国や地域、家族の文化だと思います。それを大きく変えることを迫るのは好ましくないと思っています。

臨床現場でも、「食べてはダメ」というフレーズにストレスを感じている患者さんを多く見てきましたし、若い女性がメディア情報から強迫観念で摂食障害になるケースが増えています。

やっぱり美味しいものを食べたいですし、楽しい食卓にしたいものです。食べることや特定の食品を善悪で議論せず、自分を生かすために頂く動植物の命に感謝して笑顔で食べる文化は美しいと思います。

つまり、健康活動を実践しやすく、また食文化の良い部分を後世に残していくことにも、フードテックが貢献できると考えています。
野菜がもっと身近になって、多くの人が健康になる。健康的な食生活を基本にしながら食を楽しむ。

野菜を食べることは大変なことではなくなることで、野菜の消費が増えれば、結果的に廃棄する野菜はなくなり、農業は自然と活性化していくはずです。

ベジタブルテックは、栄養学とテクノロジーを駆使して食と健康を支える

ベジタブルテックは医学・栄養学の観点から、野菜をもっと簡単に食べることができるように、そして健康になってもらえるように、食べる人が増えるから農業が活性化するという未来を創造していきます。
そのために、完熟まで育てて栄養も風味も色彩も最高の状態にまで成熟した野菜を、加熱や凍結させずに水だけを抜く技術によって、完全粉末化させることで野菜の時を止めます。

ようやく開発できた「粉野菜」を通じて、多くの人の心身の健康社会に貢献していきます。

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