野菜は健康に良いことは古今東西覆らない価値です。食事は主食・主菜・副菜を基本構成としています。このうち野菜は副菜にあたる食材です。主食は、穀類や芋類、豆類、とうもろこしなど“でんぷん”を主成分とする食材、主菜は、魚類や肉類、大豆など“たんぱく質と脂質”を主成分とする食材で、これらが不足すると虚弱してしまうため、現在でも災害や紛争、貧困によって主食と主菜の不足は低栄養や飢餓などの問題の原因となります。一方で、先進国では過食している人が多く、主食や主菜の食べすぎを減らすことが推奨されています。つまり、主食と主菜は過食地域で過食を減らし、不足地域へ循環させることができれば過不足なく理想的と言えます。
副菜は、野菜を筆頭に海藻やキノコなど“食物繊維を主としてビタミン、ミネラル、フィトケミカル”を豊富に含む食材で、日本では彩り豊かな旬の山菜を多品目の副菜として取り入れてきたことや、世界でも古くから香辛料やお茶、漢方として煎じて飲む努力がなされてきました。ところが近年では野菜不足は世界のヘルスケアにおける課題となっています。災害や紛争、貧困地域では野菜栽培が困難だったり、輸送中に鮮度を保つことが難しいなどの理由があります。先進国では、栄養学リテラシーの不足から主食や主菜に関する情報ばかりがトレンドになったり、食べているつもりでもほぼキャベツやレタスだったり、食べているのは野菜よりドレッシングだったり、など、野菜を食べる意識はあるにも関わらず野菜摂取量は年々減少しています。
野菜不足は消費者の健康増進を妨げるだけでなく、野菜の需要減少となり、結果的に農家収入の低下、生産量の減少、食糧問題、貧困問題へと連鎖的に社会問題へと繋がってしまいます。逆に言えば、野菜にはこれらの社会問題を解決・予防する力があると確信しています。
私たちベジタブルテックは、野菜不足の原因には①食べる手間、②保存の手間、③購入の手間があると考え、この3つの野菜の課題を、栄養学とテクノロジーによって解決し、野菜を身近にすることを目指しています。
宮城県登米市の農家と契約し、一致団結した生産管理を行っています。人間が食べることができる安全な食品残渣を微生物によって完熟発酵させた有機肥料のみを使用し、定植から収穫まで一切の農薬を使用せずに完熟まで育てています。廃棄される野菜を用いるのではなく、弊社の原材料となる野菜として生産していただき、農家にとっても買取が保証され、弊社も安心確実に旬の完熟野菜が得られる連携体制を構築しています。そうして収穫された野菜は276項目の微生物検査、残留農薬検査、残留放射能検査を当然すべてクリアしております。
さらに、ほうれん草やレタスなどの葉物の野菜は、人工肥料を使用した場合には硝酸塩の含有量が問題となります。硝酸塩はヒトの体内で変化して乳児のメトヘモグロビン血症や発ガン性物質の生成に関与するおそれが指摘され、EUでは厳しく上限基準があります(*1)。国内では基準化されていませんが、農林水産省からは「よく洗う」「よくゆでる」などの野菜の硝酸塩を減らして食べる対処法が推奨されています(*2)。硝酸塩は肥料の過剰施肥が大きな要因で、さらに地下水汚染など環境負荷にも関連します。現在契約している農家では、健康不安と環境負荷の観点から、葉物野菜の硝酸塩濃度をEC基準の1/10、EUベビーフード基準と同等にまで自主制限栽培されています。これら農家との生産連携と信頼関係を大切にすることで、自信を持って小さなお子様も安心して食べていただける野菜を原材料としています。
*1 Official Journal of the European Union, COMMISSION REGULATION (EU) No 1258/2011,
https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2011/1258/oj, [2021年12月11日最終閲覧]*2 農林水産省, 硝酸塩の健康への影響,
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/syosanen/eikyo/index.html, [2021年12月11日最終閲覧]収穫後の野菜は直ちに粉末化工場へ運ばれ、特許技術である水素処理によって野菜の劣化を停止させて栄養成分、色素成分、食味成分を保持状態にします。そこから厳格な食品衛生自主管理みやぎHACCAP認証の加工工場で、野菜に含まれる水分のみを完全に抜いて“野菜をミイラ化”させます。水分が完全になくなることで微生物が繁殖できず、野菜に含まれる酵素類が働かなくなるため、野菜に含まれる成分が減ることがなくなります。まさに、野菜の時を止めた状態となります。通常、野菜は植物ですから収穫後、土から離れた瞬間から栄養補給ができないため、溜め込んだ栄養を消費しながら延命して徐々に衰弱していきます。収穫後およそ10日もすればほとんどの野菜が腐ってしまう理由です。収穫から腐るまでが短時間であるにも関わらず、輸送から陳列、購入、調理を経て、ようやく人が摂取するまでを完結させる必要があります。したがって、摂取するまでに野菜の栄養成分、色素成分、食味成分がどんどん減っていき、栄養が少なかったり、見た目が悪くなったり、美味しくないから子供が野菜嫌いになったりしてしまいます。一方、農家にとっては10日以内に売り切らないと、精魂込めて育てた野菜たちがゴミになってしまいます。この農家の抱える時間制約は、卸価格低下や廃棄野菜増加の原因になり、卸価格が低いなら農薬使って大量生産、あるいは形や味を高めて価値をあげようと人工肥料使用という気にもなりかねません。
私たちベジタブルテックは、“野菜をミイラ化”させることで野菜の価値を留めることで、消費者や農家が抱える「野菜の時間制約」を解決しています。
さらに、ミイラ化した野菜を、特殊な機械によって気流にのせて飛ばし、空中で野菜同士を衝突させ合うことで“完全粉末化”した「粉野菜」を製造しています。粉野菜にすることで、料理に簡単にかけたり、混ぜたりでき、カプセルに野菜をぎゅっと圧縮充填するなど、野菜を食べる手間を解決できました。粉野菜の栄養、色素、食味成分は収穫時のままなので、味も美味しいく食べることができます。体積が圧倒的に減り、常温でも劣化しないため、世界中どこでもコストをかけずに輸送することが可能です。私たちベジタブルテックの技術であれば、すべての野菜を粉野菜にすることが可能なので、野菜の選択肢が広がり、いつでもどこでも新鮮野菜を食べることが可能になります。そして将来、災害や紛争、貧困などで新鮮な野菜が得られない国へ、日本農家の安心愛情野菜を届けていきたいと思っています。
神戸学院大学栄養学研究科との共同研究を実施中。栄養学の観点から、野菜のもつ栄養機能や、粉野菜であることの利便性について研究や考察を行っています。同研究科は岩崎(共同創業者兼CEO)の管理栄養士、栄養学修士としての出身校でもあり、そのときの同窓生が研究者として活躍しており、岩崎が医学研究者として研究に取り組んでいたときから交流が続いていた。一般的な産学連携では、研究機関と企業が完全に役割分担していることから、研究者の学術的論理と企業の経済的目的などの面で意見が合わないことが研究や社会還元までに時間がかかることがしばしばある。しかし、私たちベジタブルテックは研究者と、栄養学的見地を共有し、科学的議論が可能で、価値感と情熱を共感し合っています。栄養学による健康増進や食品栄養の可能性を探求する科学的論理と、得た知見を誠実に社会生活に還元するための効率的な産学連携が可能となっています。
さらに、農家は農法や土壌管理、植物の研究者といえ、微生物や植物生態、自然科学に通じる栄養学が不可欠です。私たちベジタブルテックは専門的な栄養学的知見を有していることから、農家とも科学的な議論を日々行うことが可能です。そうして、植物が健康で生き生きと育つ農法、土壌、水質、生育環境を開発しています。
さらに、生産管理から顧客管理、サプライチェーンなど、野菜を身近にするためのテクノロジー開発を行っていきます。