糖尿病治療の最前線 栄養管理における野菜摂取のジレンマと解決策!運動療法におけるパーソナルトレーニングの重要性とは!糖尿病専門医&スポーツドクター 田畑尚吾先生 | Vegetable Tech|ベジタブルテック株式会社

糖尿病治療の最前線 栄養管理における野菜摂取のジレンマと解決策!運動療法におけるパーソナルトレーニングの重要性とは!糖尿病専門医&スポーツドクター 田畑尚吾先生

糖尿病治療の最前線 栄養管理における野菜摂取のジレンマと解決策!運動療法におけるパーソナルトレーニングの重要性とは!糖尿病専門医&スポーツドクター 田畑尚吾先生

糖尿病の予防や治療には食事療法と運動療法が不可欠となります。
今回、東京オリンピック・パラリンピック 選手村診療所 内科チーフドクターを務め、糖尿病専門医でもある田畑尚吾先生に、糖尿病における食事療法と運動療法の実態、肥満や糖尿病改善のためのポイントについて教えていただきました。

スポーツ医学と予防医学の観点から見える糖尿病診療の社会的意義

田畑先生は、学生時代からクロスカントリースキーやマラソンなど自身のスポーツ経験を通じて、スポーツが心身の健康に与える様々なメリットに加え、パフォーマンス発揮のためにコンディションを整えることの重要性や難しさも実感されてきました。医師になり、スポーツ医学の道に進むことを決意されましたが、内科的アプローチでスポーツ医学を学ぶ過程で、実際の臨床現場では、アスリートの診療をする機会以上に、肥満や糖尿病、高血圧などの疾患の抱える患者さんや足腰の弱った高齢者など、一般の方々を診療することが圧倒的に多く、健康増進もしくは疾患予防や治療のためのスポーツや身体活動の意義や重要性を痛感されました。そうした経験から、現在は、糖尿病専門医として、薬物療法だけでなく、患者さんの生活習慣を改善することを最優先に考え、食事療法、運動療法に力を入れた診療を心がけておられます。
 

糖尿病とはどんな病気?治療の実態とは

糖尿病には1型と2型があります。1型糖尿病の発症要因は解明されていない部分も多いですが、通常は生活習慣とは関係なく、遺伝因子やウイルス感染症などをきっかけに自己免疫性の機序によって、膵臓のβ細胞というインスリンを合成・分泌する細胞が破壊されてしまうことで発症します。一方、2型糖尿病の場合には、遺伝因子に加え、肥満、過食や運動不足など不摂生な生活習慣の環境因子も発症に深く関わっています。2型糖尿病では、肥満(内臓脂肪の蓄積)によるインスリンの作用不足(インスリン抵抗性)やインスリンの分泌不足によって、血糖値が上昇することで発症します。

日本人の糖尿病のほとんどは2型糖尿病です。血糖値が高い状態が続くと、徐々に毛細血管や大血管など、全身の血管にダメージが加わり、神経や目の網膜、腎臓などの合併症や、脳卒中や心筋梗塞、足の壊疽など、動脈硬化による心血管疾患のリスクとなります。したがって、合併症予防のためには、血糖値を下げることが重要であり、特に2型糖尿病の場合には、生活習慣の改善、すなわち食事療法と運動療法がが不可欠です。しかし、もともと運動が嫌いだからやってこなかった方や、食べるのが好きな方が多いので、生活習慣を突然がらりと変えることは難しく、ある程度の時間をかけて生活習慣を改善していくことになります。

医師として治療や患者との向き合い方で大切にしていること

糖尿病は無症状であることがほとんど。風邪ひいたら咳や鼻水、発熱といった症状が出たり、腹痛や頭痛、怪我などでは痛みなどの辛い症状があるため、ほとんどの場合、病院に行って治療を受けようという意識をもちます。ところが、糖尿病では無症状であることから発症に気が付かなかったり、診断されても「痛くもないのになぜ治療しなければいけないのか。」という気持ちの人もいます。
しかしながら、糖尿病治療で最も重要なことは合併症を防ぐことにあります。糖尿病の合併症を放置すると、足の切断や失明、透析などこれまでの生活スタイルを大きく損なうことになります。さらには心筋梗塞や脳梗塞といった命に係わる合併症に繋がります。糖尿病は治る病気ではありませんが、自身の気づきや行動によって、しっかりコントロールができ、合併症を予防することができる病気です。糖尿病治療においては、糖尿病の病態や合併症、治療しなければいけない理由を患者さん自身に知っていただき、正しい知識を持ったうえで、自分の生活習慣と向き合ってもらうことが大切です。

肥満と糖尿病改善のための食事と運動のパーソナライズ

糖尿病治療において運動は有用ですが、合併症が進行していたり、胸痛や息切れなど心疾患を疑う症状がある場合には、リスクの評価と治療を優先します。実際に運動療法を行う場合には、筋力、持久力、柔軟性、バランス機能などの身体機能・体力レベルを評価したうえで、ご本人と相談して個別の運動メニューを組み立てます。現在では、食事療法についても色々な選択肢があり、その方のライフスタイルや嗜好、年齢などを考慮して、食事指導も個別化を図ることが推奨されています。パーソナルトレーナーのように、対象者に合わせて、最適な食事・運動療法を提供することが、有効性・継続性を高めるコツと言えます。
例えば、肥満の方であれば、ただ体重を減らすのではなく、体脂肪を減らすことが重要なのであり、筋肉までも落としてしまうような食事療法は推奨できません。サルコペニアは糖尿病とも深く関わっていますので、高齢の方なら特に筋肉量を増やすことも意識すべきです。
糖尿病患者では、緩やかな糖質制限も選択肢です。3大栄養素のうち、血糖上昇に直結するのは糖質ですので、糖質を食べすぎれば当然食後血糖値が大きく上がるため、糖尿病であれば、ある程度の糖質制限は治療として有効と考えられます。
脂質については、種類があることを理解しましょう。トランス脂肪酸は、動脈硬化に関与する脂質であるため、控える方が好ましい脂質といえます。一方、オリーブオイルやナッツオイル、フィッシュオイルなどは、摂取による健康効果が報告されており、これらの良質な脂質は、たくさん摂取することが好ましいといえます。
野菜には、食物繊維やビタミン、ミネラルなど多くの栄養素が含まれており、芋類などの一部の高糖質な根菜を除けば、糖尿病患者でも摂取することが望ましい食品といえます。しかし残念ながら、生活習慣病の患者さんには、野菜嫌い・野菜不足な食生活の方も多いという現状があります。

肥満や糖尿病治療における野菜不足と野菜を食べる重要性とジレンマとは

野菜はビタミンやミネラル、食物繊維や機能性を持つ成分など様々な栄養成分が含まれており、積極的に食べることをお勧めします。ただし、野菜のなかでもカボチャや芋類、トウモロコシなどはデンプンと呼ばれる糖質が多く、肥満や糖尿病の場合には控えることを指導します。例えば、サラダを食べているつもりがポテトサラダの場合や、サラダの代わりにカボチャや里芋の煮つけということがあり、注意が必要です。

また、野菜ジュースを飲んでいるつもりが、内容は果汁や果糖ブドウ糖液糖が多く含まれていて、血糖を上げてしまっていたり、サラダを食べているのに質の悪い油や添加物を含んだドレッシングを使用しているなど、野菜を沢山食べようとしても、糖質やカロリーが増えて、逆効果になってしまうというジレンマがあります。さすがに味付けせずに生で食べてくださいとは言えません。

糖質・カロリーを気にせず野菜を食べられる「粉野菜」は野菜の代わりとして画期的!

粉野菜の原料は野菜のみなので、果物や砂糖など糖質の多い成分をまったく含んでいないところは特にポイントと思います。粉野菜は血糖値や体重を増やさないので、糖尿病や肥満の食事療法でも安心して食べてもらえます。

スポーツ医学と予防医学の観点からも、働き盛りで、若年から中年にかけての方、時間がない方、自炊をあまりしない方なども利用しやすいと思います。特に昼食が炭水化物中心でラーメンなどの麺類、パンやおにぎりなどで短時間で済ませている人が多く、そういう偏った食生活が続くこと糖尿病や肥満の発症に繋がってしまいます。

粉野菜は、時間のないときにでも簡単に野菜を食べられますし、カプセルならどこでも持ち運べますので、忙しい生活の中でも、栄養バランスを整え、健康的な生活を送っていくうえで、非常に有用です。
生野菜を粉野菜で食べることができるというもので、野菜摂取のジレンマであった「野菜摂取で糖質・カロリーが増えてしまう」が解決する、「画期的な野菜の食べ方」だと思います。

医師として今後やりたい事や想い

田畑先生「私はもともと予防医学に興味がありました。もちろん病気になった方を治すことも大事ですが、現代は病気にならない身体を創ることも大切と認識されてきました。「生活習慣の乱れ→肥満→代謝性疾患(高血圧、脂質異常症、糖尿病)→動脈硬化、心血管疾患、腎不全、癌」という“メタボリック・ドミノ”の、より上流の段階で、生活習慣の改善をアドバイスし、病気にならない身体を創るためのサポートをしていきたい。今後、予防医学は益々注目されていきます。地域の子供たちや若い方々、中高年からアスリートの皆さまが心身の健康を創っていくため、頼っていただける存在になりたいと思っています。

岩崎真宏

ベジタブルテック株式会社

岩崎真宏

博士(医学)、管理栄養士、臨床検査技師。神戸大学大学院医学研究員および関西電力病院疾患栄養治療センター管理栄養士として生活習慣病治療のための基礎・臨床研究を行い国内外での研究報告と受賞実績。栄養学に基づいたスポーツやヘルスケアのための講演多数。アスリートやトレーナー、医療従事者とも連携。農業と栄養学によるヘルスケア・フードテックを目指し、2015年ベジタブルテック株式会社(旧Omoi Foods株式会社)を共同創業。

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